まずはアメリカから
2023年のミュンヘン・モーターショー(IAA MOBILITY 2023)の場で、ポルシェの合成燃料(eFuels)担当のシニアプロジェクトリーダーであるカール・ダムス(Karl Dums)氏が、CARマガジンに対し「ポルシェは10年後(by the end of the decade)くらいに合成燃料の発売を目指している、10年以内に発売される可能性があると信じている」と語られたとのこと。
最初の販売地はアメリカとなる予定とのことで、多くの補助金があることからそれらにより投資家などを見つけ競争力のある生産コストを確保していく計画のようです。
Dumsさんに合成燃料は従来のガソリンやディーゼルに対して商業的に競争力があるかを聞いた時には、彼は回答することに慎重になり
「ガソリンスタンドでの価格はとても複雑なもの。なぜならその価格はその価値に対して支払うのではなく、それがあなたにとってどれだけの価値があるかに応じて支払うものだから(a price at the gas station is a complicated thing because you will not pay what it’s worth, but what it’s worth for you.)」
と答えられたのだとか。
ん?どゆこと?
つまりは「ガソリンがいくらかという値段そのものより、eFuelが自分にとって価値ある必要なものであり、その対価として払うものであるわけだから簡単に価格だけで比較することは出来ないよ」ということかな。
ちなみにまだ現時点では何も最終的に決まっていないとのことですが、欧州連合内で議論されていることの1つとして、合成燃料に課せられる税金についてのお話があるそう。
通常、燃料に対する税金はそのCO2排出量に応じて設定されるそうですが、合成燃料の場合実質CO2排出量がゼロであることから、その扱いがどうなるのか…そして、もしかしたらそこで節約できた税金分を消費者に還元できる可能性もあるとか、ないとか。
ポルシェが合成燃料を作る理由はCO2削減をする為の他の可能性もあることを示したいため
ポルシェは合成燃料に約1億ドルを投資済み(うち7,500万ドルはHIFグローバルへの投資)で、チリに合成燃料の生産施設を建設され2022年末までにすでに130,000リットルの燃料を生産。
今後さらにポルシェとHIFによって生産を拡大し、2025年までには年間5,500万リットル、2027年までには5億5,000万リットルを生産したいと検討されています。
ちなみにこの5億5,000リットルという量が多いのか少ないのかの想像もつかないのでちょっと比較として見てみると、例えば2021年にイギリスだけで消費されたガソリン量だけでも130億リットル以上とのことで、うん、まだまだ合成燃料の生産量が5億リットルを越したとしても世界的に見れば全然少ない量ということがわかります。
でもポルシェは「ガソリンをすべて合成燃料に置き換えること」を目標にしているわけではなく「CO2削減には電動化だけではなく他の手段もあるということを証明しようとしている」わけです。
ポルシェの研究開発責任者であるMichael Stiener氏も:
『私達は合成燃料が一定量の実現可能な技術であるということを示したいと思っている』
『少なくとも研究開発としての私達の仕事は、技術的に何が可能かを示すことであり、次のステップは人々に全てを禁止する必要はないのだと納得させること』
と言われています。
ポルシェとしては、モータースポーツ、車両テスト、ポルシェエクスペリエンスセンターなどで合成燃料が応用できる可能性があると考えていて、ポルシェのクラシックカー&ハイブリッドモデルは将来的にほぼカーボンニュートラルに走行が可能となり、ガソリンエンジンの911においても将来的にはカーボンニュートラルでの走行が出来るようになると考えらています。
電気の充電器とは違い、合成燃料は従来のガソリンスタンドのシステムをそのまま使えるということも利点。
とにかく「ガソリン車を廃止、電気自動車のみにする」だけではない未来に向けてポルシェが立ち上がり健闘してくれていることを応援したいと思います。
そして、そうこうしているうちに色々と他の面からも状況がガソリン車にとって良い方向に向かうことにも期待したいと思います。
出典:Porsche to put eFuel on sale by the end of the decade
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