ポルシェCEOオリバー氏と、Mr.911 フランク氏の意見が違う
もうわからなくなってきました。
何がわからなくなってきたって「新型ポルシェ911(992型)のハイブリッド化がどうなるか」についてです。
この2020年3月だけで、ポルシェからのある2つの発言がメディアを通して報じられています。
1つが、今月初旬にMr.911の言われた「911はガソリンエンジンにこだわりたい、911はポルシェモデルの中でも電気化する最後のモデル」というものと、先日のアニュアル・プレスカンファレンスのあとにCEOが言われた「ハイブリッド化する992はとてもパワフルなものになる」というもの。
その2つの意見、そして以前992が発表された直後に、前任のMr.911がその時に語られていた内容などから、私の勝手な想像では、今のMr.911(911の開発責任者であるフランク氏)と、ポルシェAGのCEOであるオリバー・ブルーメ氏で、今後の911についての意見が対立しているのではないか、と思えてならないのです。
いやいや、これは事実とは全く違うかもしれませんので、あくまでも私の勝手な想像(推測)の話だと思って、ご興味ある方だけ見て頂けたら幸いです。
まず、今回の話のバックグラウンドとしては
- 1980年代から約18年に渡りポルシェ911の開発を手掛けていたMr.911と呼ばれる人物「アウグスト・アハライトナー氏 (August Achleitner氏)」がいた。
- 992の開発を終えた時点で、アウグスト氏は引退、その後、現在のMr.911として「フランク-シュテファン・ヴァリザー氏 (Frank-Steffen Walliser氏)」が2019年にその立場(Mr.911)に就任。
- ポルシェAG(本社)のCEOはオリバー・ブルーメ氏。←ポルシェで1番偉い人。
というものがあります。
ここで、過去の発言と現在の発言を振り返ってみたいのですが、まず最初に2018年11月に新型ポルシェ911である992が正式に発表となった直後、その頃のMr.911であるアウグスト氏が語っていたのが以下です。
以前の『Mr.911』(August Achleitner氏)が言われていたこと:
【2018年12月】
- 何故992では、MT車よりPDKは重たいのかという質問に対して、デュアルクラッチギアボックスは常にMTより重たくなるが、この992のPDKでは「電気モーター用」の大きな空きスペースがあることが1つの要因と答えている。
- 今すぐにでもハイブリッドを提供することも出来たが、まだポルシェにとって良いと思えるものではないので、出していない(現在の技術では、まだハイブリッドにするにはかなり重たいバッテリを搭載する必要があることから、車の走りを鈍らせてしまうので)。
- ポルシェ911ハイブリッドを作る準備は出来ているが、販売する準備は出来ていない。
この時点では、メディアなどでも「ああ、すでにポルシェ992には電気モーター用のスペースまで完備されているなら、992.2(992後期)が発売となる時には、ハイブリッド版も出てくるのね」と思われていたのが、だいたいの理解だったかと思います。
しかしその後、現在のMr.911が就任となり、しばらくしてから状況が一転。
新しいMr.911が、2020年3月になってメディアに対していきなり以下の発言をされたのです。
新しい『Mr.911』(Frank-Steffen Walliser氏)が言われたこと:
【2020年3月上旬の話】
- ポルシェ911は電気化される最後のモデルとなる
- かなり強く「911をガソリンエンジン車に留めるよう戦う」と言っていた
- 911がガソリンエンジン車でなくなるとしたら、それは彼がリタイアしたあとであって欲しいと言った
この発言を見た時(2020年3月初旬)、このことについてブログを書こうか凄く悩んだのです、私。でも、結局書きませんでした。
なぜ?
そう、なぜかというと、なんとなくですが「これ、ポルシェ社内で一致した意見ではなくて、彼(フランク氏)がなんとかそうしようとしていて、そのために、勝負に出てメディアに勝手に語ったのではないか」と思っちゃったからなのです。
彼が言った言葉は「will fight to let the 911 keep its gasoline engine」。ポルシェ911がガソリンエンジン車でいられるよう戦う、と。
この発言を見た時、もちろん最初は「環境問題による世の中的な動きへの闘い」なのか?とも思いましたが、でも、やっぱりこれはなんとなく「社内でも戦っているのでは」と。
あの、これ、本当に私の勝手な想像なのでごめんなさい。
でも、フランクさんはモータースポーツ部門でキャリアを積まれてきた方で、メカニカル・エンジニアをして学んでこられたのがスタートの方。
彼は本当に純粋に「ポルシェ911は最後の最後までガソリンエンジン車にしたい」という熱い想いを持っていられるのではないかと思うのです。
ただ、ポルシェは企業としてそれを簡単に認めるわけにはいかないので、CEOであるオリバー氏も、感情論だけであれば「911は最後までガソリン車ね~」となっていたかもしれませんが、そう簡単にはいかないので、ここは企業として911をハイブリッド化するしかない、という決断をしたのでは…??
フランクさんは自分がMr.911という立場でいる間には、911をハイブリッド化はさせない、とメディアに対して先手を打ってみたものの、それに対してすぐに否定をするように、あえてCEOが改めて、メディアに向けて「ポルシェ992のハイブリッドを出す予定」と発言したのではないかと思いました。
ちなみに、今回オリバー・ブルーメ氏がメディアに言われたのが以下の通り:
ポルシェAGのCEO、オリバー・ブルーメ氏が言われた(Confirmした)こと:
【2020年3月下旬の話】
- 次に発表されるのは、タイカン・クロスツーリスモ
- とってもパワフル(Very Powerful)な新型ポルシェ911(992型)のハイブリッドを出す予定である
- 718 ミッド・エンジンのスポーツカーのハイブリッドバージョンについては今年中にどうするか決定する
- マカンのピュア電気自動車バージョンは2022年に出す予定
実際のところ、現状として「現在の電気自動車向けのバッテリー技術は、ポルシェ911のハイブリット版に利用するにはまだまだである」とも言われているので、技術的な観点から実際に992がハイブリッド化されるかどうかもわからないようです。
しかしながら、ポルシェのトップであるCEOが「992のハイブリッドを出す予定である、そしてそれはとてもパワフルなものになる」と断言されたわけですから、とりあえずのところ、ポルシェはそこに向かっていくものかと思われます。
992後期が発表される段階で、フランクさんが辞めちゃったりするような流れにならなければいいなと願っています。どうなるのかな。
メディアも「なんだかこの前のMr.911の話と、CEOの話が違うけど、どっちを信用すればいいの?」となっています。
どうなるのでしょうね…?
出典:
◆ Porsche sales soar in record 2019, decision on hybrid 718 this year
◆ 'Very Powerful' Porsche 911 Hybrid Is Coming: Report
◆ Porsche 911 Hybrid, EV Not Coming Anytime Soon: Report