2026年8月12日、ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)とSinger(シンガー)がコラボレーションし、2台の特別なポルシェ911を発表。
「Art of Travel」という哲学を掲げるルイ・ヴィトン(以下、LV)が、Singerとタッグを組み、これまで培ってきた専門技術や職人技を自動車の世界に持ち込んだというプロジェクト。

発表された1台目は「Porsche 911 Reimagined by Singer – Classic」。
LVの象徴的なカラーであるサフラン、コバルトブルー、イエローを使ったこの車だけの特別なカラーリングが施されたもの。

そして2台目が「Porsche 911 Reimagined by Singer – Classic Turbo」。
こちらはLVのウィメンズ・コレクションのアーティスティック・ディレクターであるNicolas Ghesquière氏によって考案されたカブリオレで、ボディカラーはCalcaire Lutétien White。そこに美しいウッドトリムという組み合せ。

これら2台にはそれぞれに合わせて特別に製作されたLVのアイテムも用意されたとのことで、旅そのものを「Art of Living」として楽しむための車に仕上げられているとのことです。
すべての始まりはタンブールのダッシュボードクロック
今回のプロジェクトはLVとSingerとの、ある会話から始まったそうです。
それは、Singerによって再構築された車のためのダッシュボードクロックを作ってほしいという依頼だったそう。
プロジェクトの中心となったのは、取り外すことでデスククロックとしても使うことができる機械式時計で、この時計のデザインのモチーフとなったのはLVを象徴する「Tambour(タンブール)」ウォッチで、その特徴的なケース形状や、ベゼル上に「LOUIS VUITTON」の名を構成する12個の磨き上げられた文字が刻まれたデザインからインスピレーションを得ているもの。

この時計をコックピットに組み込んだところ、LVの関与をこの時計だけにとどめることは出来ないということになったそう。
そこでインテリア全体に完全な統一感を持たせるため、技術的にもデザイン的にも大きな挑戦となるインストゥルメント・ディスプレイの再設計まで行われることに。
一見すると「それだけ?」と思えることに見えるかもしれないけれど、この作業だけでも丸1年にわたる取り組みになったと言われています。
LVのデザイナーたちはスピードメーター、レブカウンター、各種ゲージに至るまで細部を再設計、針やダイヤル端部、インデックスなどにタンブールシリーズを象徴するグラフィックデザインを取り入れ、鮮やかなコバルトブルーに明るいオレンジの文字をアクセントとして組み合わせることで、高級時計作りの技術と自動車に求められる厳格な要件とのバランスを取ったデザインに。


LVの「Art of Travel」の哲学からインスピレーションを受けたこのプロジェクトは、最終的には車全体を再構築するところまで発展し、その目的は、Singerの建築的でタイムレスなデザイン言語と、洗練された素材、旅、そしてスタイルの表現によって特徴づけられるLVの文化を、本当の意味で融合させること。

このコラボレーションは、LVにとっても歴史上初となる取り組みでもあったそうで、LVがコ・ブランドのアイテムを作るのは今回が初めて。またSingerにとっても、これまでにない取り組みだったとのこと。
Porsche 911 Reimagined by Singer – Classic
それでは今回発表された2台の詳細をそれぞれ見ていきたいと思います。
まずは「Porsche 911 Reimagined by Singer – Classic」。
サフランとコバルトブルーのカラーリングに加え、トランクやサーフボード、さらにはスキーまで積むことができる専用設計のルーフラックを装備。

細部ひとつひとつのパーツが、自動車業界ではなかなか見ることができないレベルのサヴォアフェール(匠の技)を基準として再構築され、それぞれにきちんと意味を持たせることが重視されているそう。
ボディに使われているサフランは、ルイ・ヴィトンのアーカイブに150年以上前から存在し、20年以上にわたりパッケージにも使われているカラーで、同時にSingerの初期のコミッションと深い関係を持つ「バハマイエロー(Bahama Yellow)」にも通じるカラー。

さらに自動車との歴史的なつながりもあり、1924年にシトロエンのために製作されたトラベル・トランクへのオマージュにもなっているそうで、当時のトラベルケースにはすでにコバルトブルーの内側の補強材が使用されていたとのこと。
このClassicには、LVのパッケージに使われるハンドルやリボンから着想を得た、特徴的なコバルトブルーのデモンストレーション・タイヤが装着されていたり、リアのエンジン・エアインテークグリルには「L」と「V」のイニシャルから構成された幾何学模様もさりげなく組み込まれています。
もちろんインテリアにもLVらしさが。
キャビン全体には、LVで最も多く使われるレザーのひとつであるVVTレザーからインスピレーションを得た、ナチュラルカラーのレザーを使用。

シート用のレザーについてはLVの熟練した職人が選定、インテリアに使われるVVTレザー風のトリムと完璧に調和する質感とカラーを選択。その後、Singerのチームが実際のレザーワークを行ったとのこと。
ドアハンドルの縁にはLVのバッグと同じエッジ染色技法が使われ、ステッチにはイエローの糸を使用。

シートやフロントトランクのトリム、さらにリアのエンジンコンパートメントに施されたダイヤモンドパターンのエンボス加工は、LVのトランク内部を特徴づける「マルタージュ(malletage)」モチーフを再現。
シートにはベンチレーション用のアイレットが設けられ、そのひとつひとつが手作業で仕上げられ、LVを象徴するモノグラム・フラワーのデザインに。このモチーフはサンバイザーやヘッドレストにも使用されています。

現代の自動車デザインではなかなか到達できないような美的レベルを目指し、一般的な車のインテリアに使われているプラスチック製パーツは、高品質な天然素材を使って手作業で製作されたパーツへと置き換えられたとのことです。
調整ノブ、コントロールスイッチ、ロック、プルタブ、エアベントなどは金属製となり、その多くにはロジウムメッキが施されています。


それぞれのパーツは高級時計を作る際と同等の技術を使って、ひとつずつ手作業で仕上げられ、触れた時の感覚だけではなく、反射や光の当たり方まで考慮、時計製造で培われたポリッシュ仕上げやサテン仕上げのノウハウが活用されています。

他にも、例えば燃料キャップやオイルキャップの表記には、LVの時計部品に使われる特徴的な書体が採用されるなど、本当に細部までこだわりが。
Porsche 911 Reimagined by Singer – Classic スペック
- ベースはポルシェ911 タイプ964のクーペシャシー
- ボディは軽量なカーボンファイバー製、サフランカラーに仕上げられ、速度に応じて作動するリアウイングを装備
- エンジンは4.0リッター自然吸気の空冷水平対向6気筒
- トランスミッションは6速マニュアルの後輪駆動
- ブレーキにはカーボンセラミック・ブレーキシステムを採用


Porsche 911 Reimagined by Singer – Classicのための特別なトラベルコレクション
Art of Travelを本当の意味で表現するために、LVはオーナーが身に着けられるものにもこだわり、今回作られた特別なトラベルコレクションのアイテムにはキャビンを思わせるMillésimeレザーが使われ、車と同じサフラン、コバルトブルー、イエロー仕上げ。

ドライバーのためには、ナチュラルなシボのあるレザーを使ったレーシングジャケット、ボトムスにはコットンとシルクを使った厚手のデニムによるストレートカットのジーンズも用意。
さらにドライビングシューズは2種類で、1つはサイドにLVのイニシャルを配し、ラバーパッド付きソールを採用したカーシューズ「LV Rally」。
もう1つが伝統的なディテールを取り入れたハイキングスタイルの「LV Remix Derby」で、深いブルーのキーベルには「Louis Vuitton Singer」プロジェクトの装飾とモノグラム・フラワーのアイレット。
ドライビンググローブはパンチング加工され、ナチュラルカラーまたはコバルトブルー。
さらにカーボンとグラスファイバー製で、カーフレザーのトリムとリベット留めされたピークを備えるジェットヘルメットまで用意されています。

クルマのキーも特別仕様で、6本のキーを収納できるケースを開くと「Louis Vuitton x Singer」のスタンプが。
別のアイテムとして用意されたクロッシュ型のキーホルダーにはLVを象徴するブルーが使われ、バッグのハンドルに取り付けたり、首から下げたりすることも可能。

さらに1950年代のビジネス用スリーブをモチーフとした車両書類用のポシェットも。
ラゲッジについても車専用に設計されているそうで、1950年代に着想を得たヘルメットバッグには専用ヘルメットを収納でき、その金具のカラーは燃料キャップに合わせたもの。

1892年にLVが初めてカタログに掲載したスーツケースを直接のルーツとする「Bisten」にはブルーのハンドルとネームタグが付き、衣類を平らなままシワを付けずに収納可能。
1930年以来LVを象徴するバッグとなっている「Keepall」には1週間分のワードローブを収納。さらにフロントトランクには、2つをぴったりとノーズ部分に収められるよう形状を合わせた専用バッグが用意されています。


実はLVと自動車との関係はかなり古いそうで、1897年にはGeorges Vuitton氏がすでに、自動車のリアやルーフに固定することができる専用トランクを提供されていたとのことで、これには当時としては画期的だった特許取得済みの専用ロックも備えられていたとのこと。

今回の車専用に作られたルーフラックは車体形状にぴったり合うよう設計されていて、そこにはルイ・ヴィトン製のサーフボードやスキーも載せることが出来るそうです。

Porsche 911 Reimagined by Singer – Classic Turbo
クーペのデザインが完成したのち、LVとSingerのクリエイティブなコラボレーションはさらに発展したそうで、それがターボチャージャーを搭載したカブリオレである「Classic Turbo」。
ホワイトのボディにブラウンをさりげなく組み合わせ、インテリアにはレザーとウッドを使用。

このClassic Turboには「航海」と「自動車」という2つの異なる世界を融合させたいというビジョンが反映されているそうです。
また、世界や自然、太陽を直接感じられる車を目指したことから、カブリオレという選択は最初から自然なものだったそう。

ターボモデルらしい大型リアスポイラーがその性能を強調する一方で、リアのラゲッジコンパートメントは技術的にも非常に高度なもので、開くとクラシックなモーターボートを思わせるチーク風のウッドデッキが現れるらしい。
ボディカラーには、パリの街並みを形作りセーヌ川を見下ろすポン・ヌフのルイ・ヴィトン歴史的本社にも使われている白い石灰岩「Calcaire Lutétien」を思わせるカラーを採用。

そこにジュエリーのような控えめなゴールドのアクセント、そしてレザーとウッドの自然な色合いの組み合わせ。
クーペ同様、このカブリオレでも機能部品から装飾パーツまで、すべてがLVとSingerのチームによって再構築されているとのことです。
専用のダッシュボードクロックについても、Classicとは配置が異なっていて、ステアリングホイールの奥にあるインストゥルメントには組み込まず、ナチュラルレザーで覆われたセンターコンソール中央に配置。

ダッシュボードにはLouis Vuittonのシグネチャーが入り、暗くなるとテールランプの中にも同じシグネチャーが現れるそう。
ダッシュボードクロックの下にあるシフトレバー周辺のトリムにはナチュラルレザーのドローストリングが使われ、LVの「Noé」バッグのシルエットを表現。

シートの後方には、この車独自の形状に合わせて開発されたというラゲッジコンパートメントを設置。
テクニカルなウッドシェルをレザーで覆った構造で、ランナバウトのデッキに使われるのと同じ技法によって仕上げられたニス塗装のウッドが使われているとのこと。
このラゲッジコンパートメントには専用のLVラゲッジのほか、航海の世界からインスピレーションを得たという軽量ソフトトップも収納可能。

リアのエンジンコンパートメントとフロントトランクにもウッドパネル。
フロントトランクには3つのケースを組み合わせた専用トランクが収められ、それぞれが組み合わさることで機能性と美しさを兼ね備えた収納スペースに。
フロントとリアのフードにはピンバックル付きのレザー製固定ストラップも装備。
モータースポーツ、トランク作りの伝統、そして腕時計のストラップをさりげなく想起させるデザインとなっているとのことです。

Porsche 911 Reimagined by Singer – Classic Turbo スペック
- ベースはポルシェ911 タイプ964のカブリオレシャシー
- 軽量カーボンファイバー製ボディはCalcaire Lutétien Whiteに仕上げられ、ホエールテール・リアウイングを装備
- エンジンは3.8リッターのツインターボ水平対向6気筒、空水冷インタークーラーを採用
- 6速マニュアルトランスミッションと選択式ドライブモードを備えた後輪駆動
- ブレーキにはカーボンセラミック・ブレーキシステムを採用

Porsche 911 Reimagined by Singer – Classic Turboのための特別なトラベルコレクション
Classic Turboにも専用のカプセルコレクションが用意されていて、それらはホワイトのボディ、ウッド、そしてジュエリーのように使われるゴールドというクルマ自体のデザインから着想を得ているもの。


センターコンソール中央にある時計と呼応する腕時計として「Tambour Automatic」が用意され、これは40mmのセラミックとイエローゴールド製で、ブレスレットには外から見えるピンがなく、途切れることのないデザイン。


使用していない時には、ダッシュボードクロックと腕時計の両方を「Coffret Tresor」に収納可能。これは1896年にジョルジュ・ヴィトンによって初めて製作されたもので、今回は2つ1組として再構築されたそう。


さらにドライバーのためには、パラシュートシルクを使ったオーダーメイドのスーツも製作。ロゴを直接付けるのではなくて、LVの2つ目のイニシャルである「V」を立体的なV字型の縫い目によって表現、ジッパーの引き手やスナップにも控えめな刻印入り。
ドライビンググローブは編み込んだレザーで手に沿うよう作られ、手描きのモノグラムが入ったスナップがひとつ。
スニーカー「LV Sneakerina」やサングラスも用意、他にも書類用に専用のフラットケースだったり、大型のラゲッジも用意されています。
キーホルダーにはコレクションのエンブレムである「LV Blazon」を採用。
「Monogram Heritage」ネックレスにはレザー製のキーベルとメダリオンがチェーンから下がり、車のキーを身につけて持ち歩くことができるのだとか。
Singerとルイ・ヴィトン、2つの匠の技の融合
Singerといえば、クラシック・ポルシェ911をオーナーの希望に合わせ、細部の細部にまで徹底的にこだわり抜き、まさに職人技ともいえる仕事で再構築することで知られる存在。
そしてLVもまた、長い歴史の中でトランクやレザー製品、時計など、それぞれの分野で細部にまでこだわった匠の技を積み重ねてきたブランドかと思います。
そんな「細部へのこだわり」と「職人技」をそれぞれの世界で極めてきた2つのブランドが本気でコラボレーションしたとなれば、それはもう凄いものが出来上がるのも当然なのかなと思いました^^
まさにSingerとLVだからこそ実現できた2台かと思いますし、価格は発表されていなかったかと思いますが、一般人にはまったく手が出ないお値段になるかと思いますので、そこはもうそっとしておきたいと思います(笑)。

Singerからの免責事項:
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出典:
◆Louis Vuitton Takes the Road with Singer
◆These Are the World’s Only Louis Vuitton Porsche 911s by Singer, Luxury Is an Understatement
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