どうやってもアクセルオフではすべらないポルシェ911カレラ (991.2)
2020年のドライビングレッスンの締めくくりとして、筑波サーキットジムカーナ場で開催された砂子塾に参加してきたということを先日書きました。
その際に「私には荒聖治さんから教えて頂きたいこと」があり、それを教えて頂くことが、この日の私の中での最大のミッションとなっていました。
前回そのことについて書ききれませんでしたので、そのミッションがなんだったのかを今回は書かせて頂きたいと思います^^
私がこの日、どうしても知りたくて、教えて頂きたかったこと、それは『どうやったらポルシェ911カレラ(991.2)を定常円旋回ですべらすことが出来るのか』ということでした。
ここで「滑らす」といっても、
- 円を描きながら走行し、続いてアクセルを踏み込むことで車を滑らせる
というのは、以前やらせて頂いた時には、一応私でも出来たのです。
そのあと、カウンターを当て続けてずっと滑らせ続けて走行出来るかというと、それは無理なものの、少なくともこのやり方であれば、滑らそうと思った時に滑らせることが出来ました。
今回、私が「すべらせられない」と言っているのは、ポルシェのドライビングスクール(ポルシェトラックエクスペリエンス、以下PTE)で「このやり方ですべらせて下さい」と言われた、以下のやり方。
- 円を走り始めたらハンドルも固定で、あとはアクセルワークだけでだんだん速度をあげていき、リアがふんばってるってなってきた時に、アクセルをぱっとオフして滑らせる
これが出来なかったのです。
第1回目のPTEで、このアクセルオフするやり方では911を滑らすことが出来ませんでした。
納得いかなかったので、2回目のPTEでは絶対にやれるようになりたい!と思っていた矢先、定常円旋回が始まってすぐに車が壊れるという展開で、やっぱりもう、滑らすとか以前に何も出来ず(笑)。
この「アクセルオフで911を滑らせられない」ということが私の中にずーーーーっと残っていて、でも、自分だけではやっぱり今後も出来るようになる気がしなくて、なんとかしたかったのです。
そこにきて、この砂子塾で荒聖治さんを独り占めできるチャンスが!!!(あ、独り占めしちゃダメだったか^^)
もう、とにかくこの日の砂子塾には、行って1番最初にこのことを荒さんにお話し「じゃあやってみましょう」となりました。
嬉しすぎる!!
だって、本当にどうやってもアクセルオフでは滑らせることが出来なくて、自分の中では「(今はいてる)タイヤが良すぎるのかな」とか「この個体が滑らなすぎる安全なものなのかな」とか、どんどん「出来ない言い訳」を作っていっていたので…(←全部、勝手にポジティブすぎ(笑))。
でも、そんな言い訳を自分にしつつも「じゃあ、荒さんがこのカレラを操った時に『あ、本当だ。この車は滑らせられませんね』と言われるかというと、絶対にそんなことはない」と確信している自分もいたわけで(そりゃーそうですよね…)。
やっとのこと、アクセルオフで滑る黒カレラを体験することが出来るかもしれず、また自分の何がいけなかったのかを知ることが出来るかもしれず、本当にもう1発目の走行から嬉しすぎて、大興奮。
「じゃあ、やってみましょう」と、黒カレラを進め始めた荒さん。砂子塾で用意されていた定常円よりも、少し大きめに円を描きます。
なぜなら、荒さん曰く「今回の砂子塾での円は少し小さめで、このくらいの円だと出せても35キロくらいで、流すのは難しい」とのことで。
911はハイスピード(200~250km)で走ってちょうど良い荷重移動になるように設計されていることから、小さい円での時速30キロくらいでは流れない、と。
もちろん、PTEの場合はポルシェの為に絶妙に計算された円の大きさとなっていて、だいたい時速50~60kmで走れるようになっていて、荷重移動が出るくらいとなっているそうです。円の直径は前に聞いたことがあるのですが、企業秘密とのことでしたので秘密です^^
重要なのは待つこと
さて、そして結論。
うん、あの、ばっちり私のアクセルオフでは滑らないはずの?黒カレラさん、見事に滑りました。アクセルオフで。
でも、ですよ。
これ、やっぱりこの日、荒さんに個人レッスンして教えて頂かなければ、私はたぶん一生できなかった。
それはなぜか。
本当に驚きました。こんなの無理。だって『めちゃめちゃ待つ』のです。「は?」でしょう??
「待つ」のです。答えは「待つ」なのです。待つ。そう、Just wait until it happens.
円を描き始め、ある程度速度が乗ってきて、リアがふんばりはじめたなという時にアクセルオフしますよね。
そこからはただ、アクセルから足を離して、もちろんブレーキもしない、いわゆる「何もふんでいません」状態にします。
ここから、だいたい「5~6秒くらい待つ」のです。ハンドルは固定で。
アクセルオフして、なーんにもしなくて、ただ車が今までの余韻で走って行くだけを待っての5秒って、物凄く長く感じます。
でも、その5秒をひたすら待つと、次の瞬間、ポルシェがふと思い出したように「あ、滑らなきゃ」っていう感じでいきなり滑るのです。
もう、完全に「え?!」でした。「アクセルオフしてから、ただぼーっと(というわけではありませんが(笑))、待っていたらそのうち滑るの?!」って。
でも、本当にそれで滑りました。
私はてっきり「加速していって、アクセルオフしたら、その瞬間すべるもの」って思いこんでいたのです。でも、アクセルオフしてもすぐに滑らないから「あ、ダメだ、すべらない」って思ってまたアクセルを踏んで進んでしまっていたのです。これがダメだった。
図(写真)にしてみました。
このくらい、待ちます。※これは実際に滑らせた時ではない時の画像を合成して作っていますので、車の向き等々は参考になりません。だいたいの滑るまでの距離感の参考まで↓
なぜ、こういうことになるのかも教えて頂きました。
それは、991.2型である私のポルシェ911はNAではなくターボ搭載車の為、ターボラグを出さないように、アクセルオフされた瞬間に、NAとは違って、スロットルをあまりはやく閉じない設計になっているとのこと。
つまりは、ペダルではアクセルオフをしたとしても、そこから少し待たないと実際のエンジン側のバタフライは閉じないので、そのバタフライが本当に閉じるまでの数秒間のタイムラグを「待つ」必要があったのでした。
なーるーほーどー。めちゃめちゃ納得。
荒さん曰く「だから、あれだけ待ち続けないと、最近のターボ車は流れないのです」と。
もちろん、アクセルオフするまでの速度がゆっくりすぎたら、この「待ち時間」に、車の速度が遅くなりすぎて流れません。
よって、アンダーステアをかなり出してからアクセルオフしないと、流れるスピードより遅くなってしまって、結果としては、ただの安全な旋回になってしまいます(笑)。
とにかく、速度を一定にあげていって、アンダーステアを多めにガガガガ~って出してから、アクセルオフをして、ハンドル一定でしばらく待つとリアが流れるということでした。
PTEで、私と同じ様にポルシェ911を定常円旋回でアクセルオフで滑らすことが出来なかった方もいらっしゃると思います。それはきっと、ターボエンジンだからこその、この「待ち」が問題であったのではないかと。
荒さんも「実際にエンジン側のバタフライが閉じていないという、メカニズム的なことも理解していなければ難しい」と話されていました(荒さんはPTEでも必ずこういったメカニズム的な説明もされているそう)。
もう、911車内で本当に大興奮でした。約1年半越し?にやっと納得できたのですから。
何が原因で滑らせられなかったのかもわかりすぎるくらいわかって、なんだか、最初に参加した時のPTEが今、この場でやっと完結したという、そんな思いになっちゃいました。
ずーーーっと気になっていたのです。どうして滑らせられないんだろう、って。
本当は荒さんが走行して下さった「待ち」からの「リアが流れるポルシェ911」のドラレコ映像も見て頂きたかったのですが、残念ながらアップできません。だって、もう、興奮してずっとおしゃべりしているから、恥ずかしすぎる~(笑)。
この日、「アクセルを優しく上げていって、フロントタイヤが遠心力に逆らえなくなって、ガガガガっとなる…そのまま踏んだら、もっと外に行っちゃうし、戻したら内側に行っちゃう。そういうことを理解してコントロールする練習をするのが良いのでは」とアドバイス頂き、この日、私の砂子塾での定常円旋回はいつものように「すべらせなきゃ!」とは思わず練習するものになったのでした。
今後のPTE
その他、PTEの今後についてなどのお話も色々と聞かせて頂いて、とても興味深かったです。
PTEは、ポルシェが公式に提供しているポルシェのドライビングレッスンなわけですから、変に顧客に寄らないで「ポルシェならこうする」という内容を、妥協することなく提供して下さるプログラムになっていくといいなと思いました。
そうなると、私レベル(+もうちょっと出来る人くらいのレベル)の人とかでは参加することさえ出来なくなってくるかもしれませんが、それでもいいんじゃないかな、と。
そう思ってしまうくらい、ポルシェにはポルシェとしてのドライビングレッスンを、それが必要な人たちの為に提供してもらいたいと思いました^^
とにかく!!
2020年の間に、私の中での「なぜアクセルオフでポルシェ911カレラを滑らすことが出来ないのか」の疑問を晴らすことが出来たことが、今年最後の最後にポルシェに関して1番嬉しかったことかもしれません。
もう、黒カレラさんったら「アクセルオフしたら、もうちょっとそのまま待ってて」って言ってよ~(言うわけない)。1年半も悩んじゃったじゃない~。
次回、PTEに参加できる日が来たら、その時には絶対にこの「待ち」をちゃんと考えてトライしたいと思います。もう、出来る気しかしない^^!!
このように砂子塾では、用意されているレッスン内容そのものとは少し違ったとしても、自分で疑問に思った車の動きなどについても、砂子塾中に周りの方にご迷惑をかけるわけではなければ、ちゃんと説明して教えて頂けて、本当に嬉しかったです。
※定常円旋回で今回教えて頂いた時も、1人の持ち時間を守って、その中で教えて頂いています。
この日の砂子塾、私にとってはPTEのちょっとした続きでもありました。
荒さん、改めてありがとうございました。そして、こういう機会を下さった砂子塾にも大感謝です。ありがとうございました^^!
あ。最後の最後にもう1つ、余談ですが…。
せっかくなので、途中、荒さんに「ずーーっとドリフトで走って下さい!」ってお願いして、それもやって頂きました。
なにが凄いって、ドリフトされることももちろん凄いのですが、それよりも、まず最初にびっくりしちゃったのは、私の黒カレラをドリフトし始める時、たった時速28~30キロくらいの状態からいきなり滑らせ始められたのです。
私からしたら「え、こんな時速30km以下でどうしてこんなにもいきなりドリフト走行が始まったのですか?!」って。
その理由も教えて頂きました。もう、本当に凄いの一言。当たり前ですが、荒さんの車への理解度は物凄すぎて、本当に当たり前のように面白いくらい911を思った通りに扱われます。凄い。
さらには、ずーっとドリフトで滑っているのに、まるで滑っていないかのようにハンドルを切ることが出来て、滑っていても、その行き先でさえもコントロールできちゃうのです。
本当に、別世界の体験でした。「滑っているのに、好きな方に行ける?え?」って。
さすが、これこそが「世界の」方なのだな、と^^ 感動の1日でした。ありがとうございました~。
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