厳しい環境下でも堅調な業績を記録
2025年3月12日にポルシェAGのアニュアルプレスカンファレンスが開催され2024会計年度のポルシェがどうであったかと、今後についてが発表されました。
昨年までのアニュアルレポートは以下の通りです:
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ポルシェAGいわく、ポルシェの2024年は厳しい環境下でも堅調な業績で終えることが出来たとのことで、世界5地域のうち4地域で過去最高の売り上げを記録、自動車部門の純キャッシュフローも好調で、2023年の記録的であった水準にほぼ達したとのこと。

色々と新しいモデルについての言及などもありましたので、ではさっそく発表された内容の詳細を見ていきたいと思います:
- ポルシェはカイエン、パナメーラ、タイカン、911、電動マカンで6つのモデルラインのうち5つをリニューアルし市場に投入することに成功
- 同時に製品と企業計画を状況の変化に合わせて適応させてきた
- 今後も引き続き複数のドライブトレインを採用する
- 顧客は2030年代に入ってもあらゆる車両セグメントで内燃エンジン、プラグインハイブリッド、完全電動ドライブトレインからの選択が可能
- 電動モビリディへの世界的な移行期間が大幅に長くなることを考慮し、ポルシェは今後数年間で製品ポートフォリオを拡大し、内燃エンジンとプラグインハイブリッドのパワートレインを搭載した新しいモデルを追加する

911:新しいトップ派生モデルを備えたスポーツカーのアイコン
- ポルシェは特に911モデルにおいてさらに非常に感動的な派生モデルを提供する予定
- これには高収益でエキサイティングな限定版モデルが含まれる
- 911にはPorsche Exclusive Manufakturのヘリテージ限定モデルを通じて1970年代のスタイルを復活させる
- これはヘリテージデザインストラテジーによる4台のコレクターズカーのうちの3台目となる
- 中期的には911にもう1台のフラッグシップモデルも登場し、スポーツカーセグメントの水準をさらに引き上げる
- マカンをあらゆる面でより優れたものにするため完全電動化することを決めていたが、この決定は今後も変わらない
- フルEVマカンはパフォーマンス、ドライビングエクスペリエンス、デザインの面で新しい基準を作り顧客から非常に好評を得ている
- 内燃エンジンモデルのマカンが段階的に廃止されるとマカンは世界中でフルEVモデルのみとなる
- 同時にポルシェは市場の動向と顧客の需要を継続的に監視、必要に応じて先を見据えて製品戦略を調整することもある
- その1つとして例えば現在内燃エンジンとハイブリッドのパワートレインを備えたSUVセグメントの独立したモデルラインを評価中
- 新しいデザインとポルシェの特徴的なプロファイルを備え、相乗効果の恩恵を受けることになるこの新しいモデルは2020年代の終わり頃に発売される可能性がある

- ポルシェでは3つの駆動技術すべてが『感情、パフォーマンス、効率』を象徴している
- その一例がカイエンであり、2023年に現行世代(ICEとプラグインハイブリッドモデルの組み合わせ)はポルシェ史上最も大規模な製品アップグレードとなり、今後もかなりのエンジニアリング努力によりさらに開発される予定
- カイエンの販売は2024年に過去最高を記録した
- 第4世代カイエン(完全に新開発&新設計モデル)はポルシェの電動モビリティの強化を大幅にサポートすることを目的としている
- ICEモデルとEVモデルは2030年代まで並行して販売される予定
- フルEVカイエンに続いて718セグメントにフルEVモデルを導入する
- ポルシェはカスタマイズの可能性をさらに拡大している
- すでに1,000を超えるPorsche Exclusive Manufakturオプションが用意されており、Sonderwunschプログラムは特別なディテールから工場でのワンオフまで顧客が望むすべての物を提供する
- 過去5年間でエクスクルーシブ・マニュファクチャーオプションを備えた車1台あたりの平均収益は2倍になった
- 今後もさらにエクスクルーシブ・マニュファクチャーの能力は大幅に拡大されていく予定
再編と再調整のための包括的プログラム
- 2025年2月末にポルシェAGは取締役会の長期的変更を開始した
- Dr. Jochen Breckner(47)が財務およびITの責任者に就任
- Matthias Becker(54)が営業およびマーケティングの責任者に就任
- 両氏は合意によりポルシェを退社したLutz Meschke(58)とDetlev von Platen(61)の後任

- 会社の規模を再構築するための包括的なプログラムも開始した
- 2029年までに約1,900人の雇用を削減する予定
- 人口動態の変化、自然な離職、および雇用制限方針を活用してこの人員削減を達成する
- さらに部分退職のための特別プログラムや、個別のケースでの退職金支払いを伴う解雇契約など社会的に受け入れられる措置が自主的に実施されている
- 有期雇用契約の満了によりさらに2,000人の人員削減も実施している
- これらの当面の対策に加え、経営陣と労使協議会は今年後半に追加の構造改革パッケージの交渉を行っている
- これによりポルシェは中長期的にさらに効率化されることになる

- Road to 20 パフォーマンスプログラムも推進している
- 2024年には厳しい環境による業績への悪影響を部分的に相殺する上でこのプログラムが大きな役割を果たした
- 将来的にはグループも営業利益率20%超えという基本的な長期目標を達成する為の主要な手段となる
- 2025年にはコスト構造に重点を置きRoad to 20を再度強化、収益性をさらに高めることを目指す
2024年度は好調
- 2024年度の収益は主に厳しい経済環境と製品ポートフォリオの全面的なリニューアルの影響を受けた
- 中国の緊迫した市場状況、eモビリティの世界的な立ち上げの遅れ、サプライヤーネットワークの混乱が収益と売上高利益率に影響を及ぼした
- ポルシェの経営陣は様々な対策によりこれらの影響を部分的に緩和した

- グループ売上高は401億ユーロで前年の数字(405億ユーロ)から1%減少した
- しかしポルシェは販売台数の減少をほぼ完全に補うことが出来た
- これはカスタマイズの割合の増加と新発売製品の価格ポジショニングの改善によって達成された
- グループ営業利益は56億ユーロに減少(前年:73億ユーロ)
- グループ営業利益率は14.1% (前年:18.0%)
- 2024年にポルシェは困難な時期であっても高い収益性があり、財務的に強固であることを証明した
- 自動車部門の純キャッシュフローは37億ユーロで、2023年の記録的な年(40億ユーロ)とほぼ同等であった
- この数字には年金制度に関連する2億5,000万ユーロのキャッシュアウトフローが含まれる
- 自動車部門の純キャッシュフローマージンは10.2% (前年:10.6%)で予想を上回った

- 2024年度の納車台数でも好調で310,718台 (それでも前年の320,221台からはわずかに減少)
- 厳しい環境の中、世界の5つの地域のうち4つの地域(ヨーロッパ、ドイツ、北米、海外および新興市場)で販売記録を達成
- 最も良く売れたのはカイエン(102,889台)で、マカン(82,795台)と911(50,941台)を上回った
- 2024年度には納車された新車のうち27%が電動化(フルEVまたはプラグインハイブリッド)であった
- そのうち約半数がフルEV(12.7%)
- この割合は今後数年間で大幅に増加すると予測されている
- 2025年には電気自動車が33~35%、フル電気自動車が20~22%になると予想

- モータースポーツにおいてポルシェは2024年にFIA世界耐久選手権(WEC)のドライバーズタイトルとアメリカのIMSAレースシリーズの全クラスで優勝
- フォーミュラEではワークスドライバーのPascal Wehrleinがドライバーズワールドチャンピオンになった
配当は前年並み
- 2024年度の普通株1株当たり利益は3.94ユーロ、優先株1株当たり利益は3.95ユーロ
- 取締役会と監査役会はポルシェAGの年次株式総会に21億ユーロの配当金支払いを提案する予定
- これは前年と同様に普通株1株当たり2.30ユーロ、優先株1株当たり2.31ユーロに相当する

2025年:包括的な再調整の開始
- 2025年にポルシェは再編成と製品ポートフォリオ、ソフトウェアおよびバッテリー活動に合計8億ユーロを追加投資する
- これにより短期および中期的に収益性と回復力を高める予定
- 大規模な再編成と投資が2025年会計年度の結果にマイナスの影響を与えると思われる
- 意識的に包括的な再調整に乗り出し、将来に向けてポルシェを持続的に強化する
- 2025年の予測において市場環境は非常に厳しいままであり、中国での競争が激化すると予測している
- 地政学的な不確実性も、米国の新政権により続くと予想される
- 現在の2025年予測は現在の枠組み条件をもとに考慮されており、さらなる潜在的な輸入制限や関税は考慮されていない

- 前述の想定に基づき、2025年度のグループ営業利益率は2024年度の数字を下回る10~12%になると予測している
- 計画されている追加投資の他に主な理由として車両販売数の減少とバリューチェーンにおける高コスト水準の不変が挙げられる
- さらに近年の大規模な投資により非常に高い減価償却費が残ることになる
- この予測には約390億~400億ユーロの範囲の売上高の想定が含まれる
- 長期的にはグループ営業利益率20%越を目標に取り組むが中期的には厳しい環境が続くことから15~17%を目指す
ポルシェAGグループ | 2023年 | 2024年 | 変化 |
---|---|---|---|
売上高 | 405.3億ユーロ | 400.8億ユーロ | -1.1% |
営業利益 | 72億8,000万ユーロ | 56億4,000万ユーロ | -22.6% |
営業利益率 | 18.0% | 14.1% | |
販売台数 | 320,221台 | 310,718台 | -3.0% |
以上が今回発表された内容となります。
今回語られていた「(今後発売されるかもしれない)新しいモデル」はマカンサイズくらいのSUVになると言われているようですので、今まで噂があったK1とは別のSUVモデルが新たに発売される可能性があるということですね。
911についても何が出てくるのかを楽しみにしたいと思います!
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出典:(公式)Porsche AG records robust results in a challenging environment
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