ポルシェがVWに新しい長期計画を提示、再検証の上の減損
2026年9月18日にフォルクスワーゲングループ(以下、VW)がポルシェに対する評価を大きく見直したということがVWより発表されました。
その理由の1つとして発表されたのが、ポルシェ事業に割り当てられている「のれん」について約60億ユーロの減損を計上するというもの。この金額は1ユーロ約180円の計算で約1兆800億円という非常に大きな金額となります。
※「のれん」→企業が持つブランド力や評判などの無形資産のこと
発表によればポルシェAGは長期計画を更新し、今後予想される主要な財務指標についてVW(AG)に報告したとのことで、それを受けてVWがポルシェの企業価値を算定する際に使用する中長期的な前提を更新(ポルシェが示している中期的な利益率のレンジ10~15%も含まれる)。
そしてその新しい前提を使って価値を検証した結果、ポルシェ事業に割り当てられている「のれん」について、約60億ユーロの非現金性の減損が必要になったとのことです。
この約60億ユーロは、2026年度第3四半期のVWグループの営業利益を押し下げることになります。

ポルシェの時価総額が60億ユーロ下がったという意味ではない
今回の発表は「ポルシェAGの株式時価総額を60億ユーロ引き下げた」ということではなく、あくまでも対象となっているのはVWグループの財務諸表上でポルシェ事業に割り当てられている「のれん(Goodwill)」です。
また「非現金性」とされている通り、この約60億ユーロが今回そのまま現金として外部に流出するわけではありません…が、VWがポルシェの新しい長期計画を受けて企業価値算定の前提を更新し、結果としてこれほど大規模な減損を計上することになったというのは、なかなかショッキングな事実ではあります。
実は前年にも約30億ユーロを減損
そしてこの減損は実は今回は初めてではないということで、VWは2025年9月にもポルシェの長期計画をもとに、ポルシェ事業に割り当てられた「のれん」について約30億ユーロの非現金性の減損を発表されていました。
当時ポルシェは中期的な売上高営業利益率の目標を、それまでの15~17%から10~15%へと引き下げていて、そして今回またポルシェの中長期的な前提が更新されて、今度は約60億ユーロという規模の減損が発生することになったという流れ。

さらなる人員削減になるかも
そしてもう1つ報じられたことがあって、それが「ポルシェがさらに約4,100人の人員削減を検討している」というもの。
これはドイツの経済紙であるHandelsblattが報じたもので、それによるとVWの監査役会による最近の決議に関連する文書の中で、ポルシェについて「約4,100人の追加人員削減が検討されている」とあったとのこと。
ここで言われている約4,100人というのは、先日発表されていたすでに決まっている人員削減とは別のお話で、つまりは追加の人員削減案。
現時点でわかっていることといえば、ポルシェは2025年に約4,000人規模の削減を決め、さらに2026年7月にはポルシェの経営陣と従業員代表が2035年までにさらに5,000人を削減することで合意したことが発表されています。
このすでに発表された4,000人+5,000人に今回の報道内容を足し算すると、人員削減となる合計は約13,100人ということに。
海外メディアによると、もしこの人員削減が実現した場合、これはポルシェの従業員の約3人に1人に相当する規模だと言われています。1/3とは凄いな。
報道によると、今回検討されている約4,100人の追加削減は、ポルシェにおける約7億ユーロの間接費(overhead)の不足分に対応するものとされているようです。
BigGo Financeが報じている内容によると、ポルシェは2030年末までに収益を38億ユーロ改善することを目標としていて、そのうちの18億ユーロを間接費の削減によって実現する計画…だけれど、現時点で具体的な施策が裏付けられているのは約11億ユーロで、約7億ユーロ分が不足しているとのこと。
そこで、この不足分への対応として約4,100人の追加削減が検討されていると言われています。
でもこれは、あくまでも報道があっただけであり、ポルシェが4,100人の追加人員削減を公式に発表したものではありません。
また、ポルシェは2035年末まで強制的な人員削減を行わないことで、すでに中央労使協議会と合意しているはずですので、今回報じられた追加削減についても、強制的な人員削減によって実施することは事実上難しいのではないかと思います。
現時点においてVWもポルシェも、この報道についてのコメントは控えられている状態です。
まだまだポルシェは大変な時であるということがわかる報道となってしまっていますが、なんとか今後も素晴らしい車たちを作り続けていってもらえるよう、安定した経営につながっていくことを願います。
そして、個人的にはこういう報道などを見て、今になって「だからポルシェはEV化なんか目指してはいけなかったんだ」とか「今までのポルシェ(ICE)にこだわり続ければ良かったのに」と言っている人を見ると非常に残念に思います。
ポルシェがEV化を進めたのは、もちろん新しい技術への挑戦やEV市場での成長を目指す戦略もあったとは思いますが、やはりただそれだけではなくて、当時のEU規制を考えれば、ポルシェはEV化を進めざるを得ない事情があったわけで、もしEU規制が以前発表されていたままで緩和方向に向かっていなければ、2035年の時点でポルシェはEU域内では原則としてガソリンエンジン車の新車を売ることが出来なくなっていたわけです。

EU規制でそうなると言われてしまったら、ポルシェとしてはなんとかそれまでに、まずは911などをICEで売り続けられるように、メーカー全体の平均CO₂排出量を下げる必要があったこと、またそのあとはもしかしたら本当にICE車が売れなくなるという現実が目の前に来ていたことから、しかたなくそれに対応してきたのだと思います。
そして、本当にこのままICE車の販売が出来なくなるのであれば、だったらEVの車として最高のスポーツカーやSUVを作り、ポルシェが(EU規制による)これからのEV車社会でまたトップとして素晴らしい車を作っていこう、広めていこう、EVでもポルシェに乗っている喜びを感じ続けられる車を作っていこうと考えていたからこその対応だったのだと私は思っています。

もちろん、そのEVの売り方だったりマーケティングだったり、またその後EU規制が少しずつ緩和方向に向かってきた時の対応などについては、もう少し良いやり方があったのではないかと思うこともあります。
けれど、絶対に対応しなければならない厳しいEU規制が前提条件として存在したことを考えずに、ポルシェがEV化に力を入れた流れを否定するのはどうかと思いますし、ポルシェの幹部の方々の意見を今まで色々な報道だったり実際にお会いして聞いたりした時も、みなさん「ICEのMTが好き」とか「ICEを出来る限り残したい」と切実に話され、そのことに出来る限り最大限に対応されてきていると思います。
はっきり言って「ポルシェだって、好きでこうなったわけじゃないんだよ!」って言いたい気持ちで溢れているのではないかと思います。
以上!
※すみません、最後の方はすべて私の個人的感情です。
あ、とはいえ起きたことに対して、人員削減がされ、その対象となる方々がその責任を負うのはそれはどうかとも思える話ではあるので、色々と大変であることはわかりますが、なんとか救済措置が取られていくといいなと願います。
出典:
◆Volkswagen AG updates its forecast for fiscal year 2026
◆Volkswagen AG adjusts 2025 forecast in light of the effects of changes in product planning and the medium-term ambition of Dr. Ing. h.c. F. Porsche AG
◆Volkswagen Eyes 4,100 More Job Cuts at Porsche Amid Deepening Restructuring
◆Nearly 1 in 3 Porsche Employees Could Go by 2035
◆VW Group proposes 4,100 more Porsche layoffs after profit warning
