海抜6,734メートルまで登ったポルシェ911
2023年12月2日にeFuelで走るポルシェ911がチリのオホス・デル・サラード火山(Ojos del Salado)の西尾根頂上、海抜6,734メートルという高度で世界新記録を樹立したということが発表されました。
これまでの記録は2020年に樹立されていた海抜6,694メートルであったとのこと。
今回到達した海抜6,734メートルという高度はモンブラン山頂を1,934メートル超えるくらいに相当(モンブランの標高を約4,800mとして計算されたのだと思います=実際のモンブランの標高は2023年時で4805.59m)。
ドライバーはレーシングドライバーのRomain Dumas氏で、他にもチリ、フランス、アメリカ、カナダ、スイスのメンバーで構成されたインターナショナルなサポートメンバーによるチームも同行。
Romain Dumas氏は過去3度に渡りル・マンのチャンピオンになられた方とのことですが、そんな彼でも今回の体験は格別なものであったと話されています。
なんといっても走って行った場所は空気密度が海面の約半分しかなく、気温はマイナス約20度くらいであったとのことなので、それはもうル・マンを走られるのとは全然違う体験ですよね。
今回この最も高い位置まで走ったポルシェ911はかなり改造されたものだったとのことで、実際に使われた車両は2台。
サポートチームは前述の通りインターナショナルなメンバーで構成されており、それぞれ「ガイド、エンジニア、ドライバー、登山家」としての専門知識と技術を持ち、このメンバーたちはHIFグローバル、シェフラーグループ、モービル1、BFグッドリッチ、タグホイヤーによりサポートされたとのことです。
過酷な環境でこの記録を達成できただけでも喜びが大きいものであるところに、今回のこの2台の911は合成燃料で動いていたというのもポイント。
HIFパイロットプラントで生産されたeFuelが使われたとのこと。
今回の記録達成により、極端な厳しい条件下におけるHIFグローバルの合成燃料の能力もアピール出来たようです。
改造されたポルシェ911たち
今回この記録に挑戦した2台のポルシェ911はそれぞれ「ドリス (Doris)」と「エディス (Edith)」と名付けらたちょっと改造されているものたち。
そのうちの「エディス」をDumasさんが運転され実際の記録を達成。
ベースとなっているのは992.1型のポルシェ911カレラ4S、443馬力の3.0リッター水平対向6気筒エンジン車。トランスミッションは7速MT。
オフロード性能に優れた改造をされたこの911はモービル1の工場で重鎮された潤滑剤で動作し、極寒の地でもパワートレインは問題なしだったと。
いやもう、見た目からして市販のカレラ4Sとはまったく別物だし(笑)↓
2台ともにカーボンファイバーシートと、5点式ハーネスを装備。さらにポータルアクスルが追加され地上高もアップ→350㎜。
ポータルアクスルにはギア比を下げる効果もあるとのことで、低速での正確かつ穏やかなスロットル操作が可能になったとのことです。
また、岩の上の走行に対応する為に、軽量でありながらも非常に丈夫なアラミド繊維のアンダーボディ・プロテクションも装備。
先頭していた車両にはシェフラーグループが開発・提供をした特別な技術である「ステア・バイ・ワイヤー」も搭載。
このシステムはスペースドライブと呼ばれるもので、火山などの独特な地形においてDumas氏が危険で垂直に近い坂道を上る際などに、必要な場所に正確に車を配置できるよう詳細なフィードバックをされたとのことです。
その技術も凄いけれど、そのシステムが出す情報が少しでも間違っていたら「ほぼ垂直に近い坂道」を落ちることになったかもしれないわけで、思っていたよりも相当凄い挑戦だったのだなと思いました。
実際の工程としては、チームは安全第一のためにゆっくりと日に日に高度をあげて、2週間の時間をかけ高地に順応。
911には特に問題もなく、空気の希薄化を感知しそれに応じて燃料供給を調整、パフォーマンスが最大化されていたとのことです。
911って市販の普通の車でも空気の希薄化の感知なんてするの??しないですよね??
いや、でも「911の標準システムが」と書いてあったので、もしかしたら普通の911も空気の希薄化を感知して調整してくれるのかも??なにそれ、知らない!!
あとはタグホイヤーから提供されたコネクテッド・スマートウォッチを介して、高度だけでなくドライバーたちの心拍数・睡眠パターン・消費カロリーなども綿密に監視。
高山病やその他の健康へのリスクが常にあったことから、チームの一員であった2人の医師によって監督されていたとのことです。
火山上部の雪は比較的少なかったそうですが、それでもやはり岩場で通れる道を見つけなければいけないなど、大変な状況であったようです。
911は全輪駆動システムとワープ・コネクターによりグリップを維持しながら、傾斜を形成する砂利と火山灰を乗り越えたとのこと。
そしてついに、2023年12月2日の3:30amにチームは頂上へ向けて出発。3:30amの山の上なんて真っ暗なんだろうな…。そんな中を車で進むだなんて怖ろしい。
その後3:58pmに頂上に到着、最も高い高度に登った911としての記録樹立を達成されたのでした。
もちろん、記録達成後にはチームも911も無事に無傷でベースキャンプに戻られたとのこと。良かった良かった。
こうしてポルシェ911は世界でもっとも高いところに登った車として記録達成となったわけですが、今回「ギネスに登録された」という記載は一切ないのでギネスとしては登録されていないようです。
改造しすぎているのでこれを「911で登った」とは認められないとなったのか、認定される為の条件が何か大変だったのか、そもそもギネスじゃなくてもいいやと思ったのかはわかりません。
とにかく、まだ誰もが達成されていなかった海抜6,734メートルという高度を達成したポルシェ911ということでした。しかも燃料はeFuelで!
…で、どうしてこの挑戦、ダカールじゃなくてカレラ4Sだったのでしょうね^^?改造したとしてもカレラ4Sの方が軽いからかな??
出典:(公式)Porsche 911 achieves new altitude world record
関連記事:
◆ポルシェがチリでeFuels (合成燃料)の生産をスタート
◆タイカンクロスツーリスモが電気自動車として最大の高度差移動でギネス記録を更新
◆タイカンクロスツーリスモが電気自動車として最大の高度差移動でギネス世界記録に
◆ポルシェタイカンが室内ドライブ最速でギネス記録更新
◆最長ドリフトでポルシェ・タイカンがギネス記録達成