2026年シーズン開幕から登場する新型911カップ(992.2)
新型ポルシェ911 GT3カップとなる新型911カップが2025年8月8日に発表されました。
これ今回の発表で1番驚いたのが「911 GT3カップ」という名前がなくなったということ。
今後このポルシェ・モービル1・スーパーカップや各種カレラカップ選手権などのワンメイクカップに使われるレーシングカーの名称は992.2型からはシンプルに『911カップ』となりました。

最新型の911カップカーは自然吸気4.0リッター水平対向6気筒エンジン搭載の、出力は先代より10PS向上した382kW(520PS)に。
今後「GT」の名称に数字を組み合わせた車名(つまり「GT3」とか)はオープンブランドのレーシングシリーズや特定カテゴリー向けのモデルにのみ使用されるそうで、例えば今回同日に初公開となった新型911 GT3 Rの進化版がその例にあたります→こっちには「GT3」という名前がついている。
※↑この新型911 GT3Rについては別途記載します。

911カップカーは公道走行が可能な911 GTモデルをベースに設計されていてポルシェ本社工場であるツッフェンハウゼンにて量産車と並行して生産。
この手法が高い成果を上げているとのことで、2020年末に現行型911 GT3カップカーの生産が開始されて以来すでに1,130台を製造。
これまでにワンメイクレース専用のポルシェ911は累計5,381台が生産されています。
適応されたデザインと改善された空力特性
新型911カップは外観面でも先代とは一線を画していて、フロントまわりは992.2世代の911 GT3のデザインを反映したものに。
フロントスポイラーリップは3分割構造となっていて接触による損傷時には破損部分のみを交換できるようになっているそうで、これは利用者にとってはとてもありがたいことですよね^^
これにより補修用部品の梱包・輸送コストも削減される、と。
デイタイムランニングライトの廃止も同様の目的によるもので、衝突時に背後のラジエーターを損傷する心配がなくなりライト自体を交換する必要もなくなったとのこと。

フロントフェンダーにはルーバーベントが一体化されていて、ホイールハウス内の空気の流れを促進するとともにフロントアクスル上のダウンフォースを高める。
同様の効果は空力的に最適化されたアンダーボディによっても得られて、これは標準モデルと同様に車両の走行性能に良い影響を与えるそうで、さらにフロントホイールアーチ後方に配置された「ターニングベーン(turning vanes)」がフロントエンド周辺の空気の流れを改善。
これらの要素が相互に作用することで高速域でのフロントアクスルの応答性が向上し、各コーナー進入前に車をより精密にコントロールすることが可能になっているとのことです。
新型911カップのリア周りはよりアグレッシブなスタイルへと刷新され完全に再設計。
スワンネック型リアウイングはウイングステーとの接続部が改良され位置調整や取り扱いが容易に。

エンジンフードも徹底的に見直されたそうで、ドアを含むほぼすべてのボディパーツと同様リサイクルカーボンファイバー・フリースとバイオ由来エポキシ樹脂の組み合わせで製造。
例えば他の製造工程で発生した端材を再利用してフリースを生産することで環境負荷の低減だけでなく補修用部品価格の安定化にも寄与しているとのことです。
レーシングエンジン
水冷・高回転型の6気筒エンジンは引き続き自然吸気方式を採用。迫力あるサウンドを響かせる4.0リッター水平対向エンジンはポルシェ911 GT3に搭載されるユニットがベース。
量産型エンジン由来の追加部品として流量を最適化した個別スロットルバルブや、バルブ開放時間を延長したカムシャフトを採用しそれらにより中央配置のスロットルバルブが不要となった代わりに他のモータースポーツ選手権で必須となるエアリストリクターの装着が可能に。

出力が10PS向上してもエンジンの耐久性は変わらず、サーキット走行100時間ごとのオーバーホールで対応可能となっていて、さらにレースシリーズやサーキット、地域ごとに異なる騒音規制に適合するために3種類の排気システムも用意されているとのことです。
色々なところでそれぞれの規制が違うわけで、それらに対応するように作られるのもなかなか大変ですよね。
最新型ではより高耐久な4ディスク焼結メタル製レーシングクラッチが新たにエンジンの出力をシーケンシャル式6速ドッグギアボックスへと伝達する役割を担い、このアップグレードによってスタンディングスタート時にこれまで6,500rpmに制限されていたエンジン回転数を引き上げることが可能になったため、レース序盤のサウンド演出がさらに高まっているとのこと。
それは聞いてみたい^^

また誤ってエンストした際にはドライバーがクラッチペダルを踏み込むと同時に作動する自動エンジン再始動機能を新たに搭載。…って、そうか、やっぱりこんなカップカーでレースされるような素晴らしいドライバー様たちであっても(普通のマニュアルとは違うわけでしょうからどうなっているのかわかりませんが)誤ってエンストすることもあるのね(?)。
さらにブレーキライトに新しいストロボスコープ機能が追加され、特にスタートフェーズで後続車へ注意を促すことが出来るようになったとのこと。これにより今まで安全用途として使用されていたハザードランプが不要に。

ブレーキの性能向上、寿命延長
ブレーキシステムは大幅な改良がされ、フロントアクスルには直径380ミリのディスクを採用、断面厚は従来の32ミリから35ミリへ拡大。
これにより自己換気用の冷却チャネルを大型化でき放熱性能が向上したとのこと。
この開発の背景にはセンターウォータークーラーをフロントトランク後方へ移設したことがあり、これによりフロント中央部からブレーキへ冷却風を直接導くことが可能に。

さらにブレーキディスクハットの外径を小さくしたことでディスクとブレーキパッドの摩擦面積が拡大。
これによってより効率的な減速性能が得られるだけでなく、ブレーキパッド幅の拡大による耐久性向上、長距離レースでの信頼性確保、さらには各部品の寿命延長にもつながるとのこと。
また、ボッシュ製M5レーシングABSがすべての911カップカーに標準装備。
新たに追加された加速度センサーからの信号検出に対応しデータ処理能力も強化。さらに高度化されたソフトウェアによって二系統のブレーキ回路のいずれかで漏れが発生した場合にはドライバーへ警告を行うことも可能に。
加えてブレーキフルードのリザーバータンク容量が拡大されて長距離レースにも適した仕様となったそうです。

あとはステアリングストッパーの調整によって電子制御式パワーステアリングの切れ角が拡大され最小回転半径が小さくなり、狭い市街地での取り回しが容易になるだけでなくステアリングの切れ角増加によってオーバーステア発生時の修正操作もより効果的に行えるようになっているそう。
ん?市街地での取り回し??
レース中およびピットでの操作を簡素化
ステアリングは再設計された高品質なマルチファンクションステアリングホイールが採用され、これはデザイン性の向上に加えて実用面でも利点があるそうで、例えば中央のロータリーコントロールによってABSの介入度やトラクションコントロールの調整が可能に。
さらに新設計のカラーイルミネーション付き操作ボタンは各ラベルの視認性を向上。
シート横のセンターコントロールパネルはレース中であってもドライバーが容易にアクセスし操作できる位置に配置。
物理スイッチの数は従来の10個から8個に変更され、右下のボタンを押すことでディスプレイに追加メニューページが表示される仕組みに。

これによってピットレーン速度、エキゾーストマッピング、ステアリング舵角リセットなど幅広い詳細設定を車内から直接調整可能となりノートPCを接続する必要がなくなりチームの作業効率が向上。
さらにドアクロスバー内側にはフォームパッドが追加されドライバーの腕や脚、足を保護する機能が強化されているとのこと。
新型911カップでは電子システムのアップグレードも走行性能向上に寄与。TPMS(Tyre Pressure Monitoring System/タイヤ空気圧監視システム)は中央ダッシュボードディスプレイにタイヤの空気温度を表示できるように。
ラップタイムや位置情報の計測には従来の赤外線方式に代えて大幅に高性能化されたGPSアンテナを採用。

さらに上位モデルである911 GT3 Rの実績ある機能も統合。ピットレーン通過時のラップタイム計測やピットストップで車両が完全停止すると自動的にエンジンを停止させる「プレキル」機能がそれにあたるとのこと。
加えて新たに導入された電子監視システムが独立電源の9ボルトバッテリーで駆動する消火装置作動ユニットの充電状態を常時チェックするように。

911カップの開発にあたりポルシェ・モータースポーツは今回もミシュランと提携、ワンメイクカップカー向けの新世代タイヤを開発されたそうです。
実走テストはイタリアのモンツァ・サーキット、ブランデンブルク州のラウジッツリンク、そしてポルシェのヴァイザッハ開発センター内テストコースで実施。
テストドライバーとして元ポルシェ・ジュニアのBastian Buus氏、Laurin Heinrich氏、Klaus Bachler氏に加え、経験豊富なレーシングドライバーであるMarco Seefried氏が参加されたとのことです。
またまた新しく、名前も新たに『911カップ』となったこちらのお車に会える日が楽しみです^^

出典:(公式)The new 911 Cup – stronger performance for the successful one-make model
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