第5回目となるポルシェのレストアチャレンジ
今年で5回目の開催となる、アメリカの各ポルシェセンター(正規ディーラー)ごとにクラシックポルシェをレストアする技術を競う大会『ポルシェクラシックレストアチャレンジ』におけるチャンピオンが決定。
アメリカのポルシェカーズ・ノースアメリカ(PCNA)の3つの販売地域である西部・中南部・東部にて夏にそれぞれ開催されたコンテスト後、Luftgekühlt 11の場で表彰されたとのこと。
Luftgekühlt 11は空冷ポルシェのイベントで、今年はノースカロライナ州で開催されていました。

5年目となる今回は全米から過去最大数となる73台もの車両がエントリー。
全米各地のポルシェセンターが以下の3つのカテゴリーにて競い合われました:
- 保存 (Preservation):車両のオリジナル性を維持することに重点
- 修復 (Restoration):車両を元の仕様と状態に戻すことを含む
- 個別化 (Individualization):創造的な変更が可能
この3つの部門の優勝者からさらにグランド・ナショナルチャンピオンが選出され、さらにピープルズチョイス賞というのがあって、これは一般の人が採取候補者の中から1台を選ぶというもの。

個別化(Individualization)優勝であり、かつグランドナショナルチャンピオン:Porsche Bend
個別化部門の優勝、そしてさらにグランドナショナルチャンピオンに選ばれたのはポルシェBendによるレストアで、お車は『1973 Porsche 911T, RSR Tribute』。

こちらのポルシェBendは最初この1970年代初期のクラシックポルシェを2024年のクラシックレストアチャレンジにエントリーするつもりだったとのことですが、いざ分解を初めてみると本当に特別なものを手に入れていたことがわかったとのこと。

そこでテクニシャンたちはスチール製のRSRフェンダーフレアを使ってボディを再設計、成形して溶接、印象的なワイドボディのシルエットを作り出したそう。
ボディをオリジナルの鮮やかなバイパーグリーンに戻す準備をしながら、塗装職人たちは工場出荷時の外観を忠実に再現。
インテリアではカスタム「S」ダッシュトリム、RSスタイルのドアハンドル、そして964RSアメリカ専用のドアプルに千鳥格子模様のインレイを手作業で施されたとのこと。

パワーはポルシェクラシック「8R」ケースをベースにした2.8リッターエンジンと最新の燃料噴射システムから供給。
280馬力以上を発生するこのエンジンには、エンジン出力に合わせて最適化されたリミテッド・スリップ・ディファレンシャルを備えた、改造された915用ギアボックス。

修復(Restoration)優勝:Porsche North Houston
修復部門でチャンピオンとなったのはポルシェNorth Houston。
2004年のポルシェ911 GT3が受賞です。現代のクラシックを工場出荷時の完璧な状態に戻すことを目標に始まったリストア。

スピードイエローの996.2型GT3はアナログな3.6リッターのメツガーフラット6エンジン搭載。
最初のステップとしては経年劣化したペイントプロテクションフィルムやいくつかの機械部品などの修復が必要な主要箇所を特定。

車内ではダッシュボードを取り外し、適切な空気の流れとキャビンの機能を回復するための修理をし、長年のグリースや汚れはドライアイスブラストでエンジンベイとアンダーキャリッジから除去。

エンジンには新しいシールと冷却パイプが取り付けられ、クラッチも交換されたとのこと。
チームはトランスミッションを慎重に点検し正常な動作を確認、続いてスピードイエローの塗装修復と車内のタッチポイントのリフレッシュに取り組まれたとのことです。

保存 (Preservation)部門優勝:Gaudin Porsche of Las Vegas
あれ?Gaudin Porsche of Las Vegasって、何気に昨年も同じ保存部門で優勝されているような。凄い。今回もこの部門に狙いを定めてきたのかな^^

今回リストアされたこちらのお車、なんと1994年にデトロイトのバーで営業時間終了後に少人数の常連客によって高額の賭け金でのポーカー勝負が行われ、その時あまりに賭け金が高額すぎたため、賭けの担保として出された1988年式ポルシェ944ターボSなのだとか。

ポーカー勝者が手にされたこちらのお車は、その勝者の方が亡くなられるまで毎日運転されていたとのことです。
なんというか、ラスベガスにあるポルシェセンターがリストアするのにふさわしい歴史的背景を持つポルシェ…。
それから約20年の間この車は同じ場所に放置されていたとのことですが、ボンネットストラットやエアデフレクター付きワイパーブレードもオリジナルのままだったとのことで、今回目指されたのはシンプルで、可能な限りオリジナル性を維持するということだったそう。

2025年2月にフルオイルサービスを含む機械的な整備が開始され、主要な摩耗部品についてはウォーターポンプ、ドライブベルトの交換、クーラント膨張タンクの交換。
ブレーキシステムは全面的にオーバーホールされ、安全性とペダル本来の感触が復元。
こちらの944に対する顧客の反応は圧倒的だったそうです。いや~、なんといってもこのお車の始まりの物語がポーカーテーブルだったというのが良いですよねぇ。

ピープルズチョイス受賞: Harper Porsche
最後に、ピープルズチョイスに輝いたのはHarper Porscheによる1992年式ポルシェ964 RS。

ゾンダーヴンシュプログラムの精神に触発され「もし制約のない964カレラRSを造るとしたら」という発想から生まれた1台。
ボディカラーはハーパー・ポルシェの皆さんがお気に入りだというポルシェグリーンを彷彿とさせる美しく変化するパール調の塗装で、さらにクロマフレア風塗装にインスパイアされたというアクセントも随所に。

インテリアにはブラックのアルカンターラとグリーンのアクセントがステッチ、カーペットの刺繍、ドアカードなどに。
ダイヤルインジケータ付きのカスタムメーターはロレックスデイトナやポルシェデザインの時計からインスピレーションを得ているそう。

マットカーボンファイバーのように見えるインテリアコンポーネントは実際には軽量化に貢献し、RSにふさわしい視覚的な魅力を放っているとのこと。
機能的なカーボンファイバーはエンジンベイにも引き継がれていて、このRSの為に開発・製造されたエンジンは394馬力と343ポンドフィート(約466Nm)の力強いトルクを発生、100馬力/Lの基準を楽々と超える718ケイマンGT4RSのパワーウェイトレシオに匹敵。

レストアチャレンジの意義
アメリカは世界で最も多くのクラシックポルシェが流通している市場だそうで、今回のレストアチャレンジに参加されたポルシェたちだけでなく、多くのクラシックポルシェたちが訓練を受けた技術者たちによって整備がされています。
こうした技術者の方々は約85,000点におよぶポルシェクラシック純正パーツを駆使し包括的なレストアプロセスを実現。
普段から多くのクラシックポルシェたちに触れ、日々それぞれがレストア・チャレンジをされているようなものなわけで、今回のこうした大会はその日々培ってきた技術の集大成を披露する場。
クラシックポルシェたちは車そのものも素晴らしいことに加え、こうして高い技術を保持、受け継いでいかれるメカニック/テクニシャンの方々がいらっしゃるからこそ長く走り続けられているのですね^^
出典:
◆(公式)2025 Porsche Classic Restoration Challenge National Champions Crowned
◆(公式)Porsche fans flock to Luftgekühlt 11 in North Carolina
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