Mr.911が引退、新たなミスター911による今後のポルシェ911
1980年代から、約18年に渡りポルシェ911の開発をてがけてきたアウグスト・アハライトナー氏 (August Achleitner氏)。
今まで「Mr.911」として知られていた人物です。
2018年に彼は「新型ポルシェ911(992)の開発を最後に引退する」ということを発表していて、その発表の通り、アウグスト氏はポルシェ992の開発を終え引退。
新たなミスター911 フランク-シュテファン・ヴァリザー氏
その後、2019年からはフランク-シュテファン・ヴァリザー氏 (Frank-Steffen Walliser氏)が、ポルシェとそのファンたちにとっては、CEOなどよりもより重要な役職とも言われているという、新たな「ミスター911」となったのでした。
写真は左がアウグスト・アハライトナー氏、右が新しいMr.911のフランク-シュテファン・ヴァリザー氏↓
今後のポルシェ911を開発をしていく、トップの存在であるMr.911の存在。
これはもう、ポルシェにとっても、世界中にいるポルシェ911ファンにとっても、とても気になる存在となります。
だって、言ってみれば今後の911がハイブリッド化するのか、電気自動車になるのかなどの方向性等を含め、かなりの部分が彼の手に委ねられることになるわけですよね。
というわけで、今後のポルシェ911の未来を決めていくと思われる、新たなミスター911であるフランクさん(←いきなり勝手にフレンドリー(笑))について、彼がどのような方で、そして、その彼は911についてどのように考えられているのかを、ちょっと見てみたいと思います。
新ミスター911は、完全なる”ポルシェ人"
彼がアウグスト氏から911に関する仕事を受け継いだのが、2019年4月。
ポルシェ911について、
「ポルシェのブランドそのものであるこの911は、55年以上に渡る歴史があり、かつ沢山の人から、その詳細に至るまでを注目され、とにかく、ポルシェにとって最も重要な車」
と、そんな風に語る彼の想いからみても、今回、彼が新たな「ミスター911」になるということは、彼にとってもそう簡単な決断ではなかったのではないかと思います。
フランクさんは、彼の今までの24年間に渡るキャリアを一貫してポルシェで積んでこられている方。本当に生粋のポルシェ人といえる方です。
新・ミスター911は、前にミスター918と言われていた人
フランクさんは、モータースポーツ部門でキャリアを積み、その後「ミスター918」とも呼ばれる存在に。
というのも、まだまだコンセプト状態で、なかなか進まないプロジェクトであったポルシェ918を、実際にニュルブルクリンクでラップレコードを出せるくらいのハイパーカーとして成功させたのが、彼であったそう。
今回、このフランクさんにインタビューしていた記者が「彼と話して5分で、彼がどれだけ車が好きなのかがわかった」と書かれている通り、フランクさんは幼少の頃から現在に至るまで、本当に車が大好きな方なのだそうです。
もちろん、車会社で働いているのだから、そもそも車はみんな好きなのでは?なんて思われるかもしれませんが、やっぱり「車が好き」というベースのなかにも、「まあ嫌いじゃない」から「車、好き」というレベル、そして、さらにはもう周りの人から見ても「あの人はもう、何を語らなくても、車が好きすぎてたまらないのがわかるよね」というレベルまで、様々だと思うのです。
フランクさんはそういう観点からすると、ポルシェで働いていることも「仕事だから」よりも、「本当に車、ポルシェが好き」だからであり、幼少の頃から車が大好きだったという、そんな彼が生まれて初めて口にした単語は「ママ」でも「パパ」でもなく、なんと「Car」だったというエピソードも(笑)。
え~、それ本当に~?っていう気もしますが、この話はフランクさん自身が、彼のご両親からそう聞かされていることなのだそうです。
もう、本当にそうだったら、彼はまさに「車に関わるために生まれてきた」のかもしれないと思っちゃう^^
そんな彼、さらにポルシェに入社する時までを振り返ってみると、まず彼はシュトゥットガルトでメカニカル・エンジニアリングを学び、その後、ポルシェにてインターン。
1995年にインターンを始めてから4年後に彼の人生に転機が。
それが、ポルシェの役員から、その人のパーソナルアシスタントにならないか?とヘッドハントされたことだったそうです。
その話を受け、ポルシェの役員たちの近くで働くことが出来たおかけで、ポルシェの企業としての様々なことが見えるようになり、かつ、偉い人たちにも、自分のことを知ってもらえるようになったことで、彼のキャリアが加速したと。
自らポルシェ918スパイダーのプロジェクト・マネージャーに志願
その後、2010年にはポルシェ918のプロジェクトをまかされることになるわけですが、これも実際には「まかされた」のではなく、正しく言えば「まかせて下さい」と、自ら手をあげたのだそう。
「もし918スパイダーのプログラムについて、モータースポーツとハイパフォーマンス・カー、そして電子工学についての経験があるプロジェクト・マネージャーを探しているなら『私』がいますよ」と、自らを売り込んだのだとか。
そして、プロジェクトマネージャーとして採用された結果、彼は918スパイダーのプロジェクトを成功へと導き「Mr.918」と呼ばれるようになったのでした。
…って、このエピソードを聞いてみると、彼が新たなミスター911になることにも、迷いはなかったのかもしれませんね^^
新しいミスター911が考える今後のポルシェ911
さて、そしてここからが重要(私には)。フランクさんが考える「今後のポルシェ911」。
彼いわく「911のデザインは非常に重要。911の象徴的なデザインであるフライライン(911のウィンドウからおしりにかけての流線的なライン)、ヘッドライト、ワイドなリア、そして、それらデザインに加えて、エンジンは燃焼するもので、水平対向6気筒。これが911である為の「絶対」であると思っています」
そして、彼の考える今後の911としては
■ 911にハイブリッドテクノロジーを適用することには問題ないと思う。ただし、それが「ハイブリッドにしたいからハイブリッドにする」という理由ではなく「その方がより良い車になるから」であれば問題ないということ。
■ ハイブリッド化するなら、その時は必ずより良い911になっていなければならず、911が911として成立していて、車重や、スロットルレスポンスに関してもすべて良くなるからこそ、でなければならない。
■ フル電気自動車化した911は全く考えられない(いえーい!←あ、すみません、これは私の心の声(笑))。
■ 市場はまだまだ燃焼するエンジンを求めていて、フル電気自動車がそれらの希望をすべて満たすことは出来ないと考えている。
■ 今後、世の中はもっと変わっていくだろうし、環境問題においても色々と変化があるかもしれない…けれど、私が思うに(そのような電気自動車化しなければならない状況になったとしても)、ポルシェ911が1番最後に電気自動車化される車になると思っている(=つまり、最後の最後までフル電気自動車化はしない意向であるということ)。
なるほど~。
彼の想いだけを聞いている限り、ポルシェ911がすぐにフル電気自動車化されて出てくるという可能性は低そうです。
ただ、彼は進化するための改革であれば、新たな技術を取り入れたり、変化を恐れる人物ではないそうなので、今後、ハイブリット化については、911が「より良くなる」のであれば、可能性は大きいと思います。
実際にもう、992はハイブリット化に対応できるように作られているとの前Mr.911も話していましたし。
フランクさんいわく「私達は、ポルシェ911に変化をもたらすことに、とっても、とっても慎重になっている」と。彼らが最も時間をさいて話し合いを重ねるは、ポルシェ911の何かを変更する時なのだそうです。
「どのテクノロジーを、いつのタイミングで取り入れるのかということの、正しい判断をする必要があります。ただ、私に迷い(緊張)はありません。正しい決断をするのに、迷いは必要ないのです。」と。
すでにもう、新型ポルシェ911(992)のターボSのプロトタイプの試乗レビューが公表されていましたが、その場でも、こちらのターボSに乗られて説明されているのが、フランクさんでした↓
これからのポルシェ911の方向性を決めていく要となる人物である、ミスター911。
何にしろ、何よりも嬉しいのが、いや、もうこれは当たり前の大前提なことなのでしょうが、ビジネスどうこう以前に、彼自身が純粋に『ポルシェ911のことが大好き』ということ。
本当に911が好きで、911のことを常に誰よりも真剣に考えて下さっているポルシェの皆さんが開発される今後の911であるなら、きっと、どうなっていっても、結果として素晴らしいポルシェ911が出来上がるものと思っています。
今後が楽しみです^^
出典:
◆ Meet the new Mr 911
◆ 2020 Porsche 992 911 Turbo S prototype review
◆ 【NEWS】「ミスター911」と呼ばれたポルシェの開発者、アウグスト・アハライトナーが引退。