新たに昔のポルシェ911たち向けにマグネシウム製のクランクケースが提供開始されるようになったという発表が2023年3月8日にありました。
ポルシェクラシックからの提供となり注文はポルシェセンターからも純正パーツとしての注文が可能。このケースの対応モデルは:
- Fシリーズ
- Gシリーズ (2.0、2.2、2.4、2.7リッターエンジン車)
つまりは対象となるモデルの中には昨年50周年を迎えたポルシェ911 カレラ RS2.7も含まれるというわけですね。
そもそも『クランクケースって何?』というとこから私は始めた方が良いわけですが^^、クランクケースはクランクシャフトが収められているケースのことで、今まではこのクランクケースが破損したりした時には小さな亀裂であれば溶接したり、または古い他のエンジンの中古部品を再利用するしかなかったそうなのです。
でも今回からこの新たなクラシック911向けのクランクケースが提供されることになったことで、ほとんどのクラシック911モデルに対して新しいエンジンを作ることが可能になるとのこと。
こういったオリジナルに忠実なエンジンコンポーネントに対する顧客からの需要はとても高いそうで、ポルシェクラシックはすでに他の世代の911向けのクランクケースの製作にも取り込んでいるとのことです。
今回のこのクランクケースを作る為にまずはアルミニウム製のクランクケースであるポルシェ962 グループCレーシングエンジンを再現することえ必要なデータセットを得たそう。
あとはポルシェクラシックの専門家たちがポルシェのアーカイブにあるパーツリストと技術情報を調べ、その設計詳細について元&現在のスタッフたちにインタビューをしたり。
古いエンジン図面や生産関連のデータは完全に解読できるものではなかったそうなので、ポルシェであってもそういった過去の資料がすべて綺麗に保管されているとは限らないということにちょっと驚き。
なんでもきちんと保管されていそうなイメージがあるので意外でした。
今回新たに作られたマグネシウム製クランクケースも、こうしたアルミニウム製クランクケースからのデータセットの恩恵を受け作られたとのことです。
すべてのクランクケースにはデザインバージョン、そして購入部品番号の記載も。
新たに作られたクランクケースは、CADデータを元にサプライヤーが砂型鋳造法でケースを鋳造。続いて5軸のCNCマシンというもので機械加工されるそうで、このプロセスではなんと50種類以上の切削工具、穴あけ工具、フライス工具が使用されるとのこと。
シリーズ生産の為にはポルシェお得意の厳しい品質管理があるわけで、個々のケースごとに3D測定プローブを使っての測定がされ、さらに三次元元座標測定機で加工データとの比較も実施。この測定には1,300を超える寸法管理がされるそうです。さすが。
もちろん、このクランクケースによって作られたプロトタイプのエンジンは数週間に及ぶ大規模なテストも実施されていて、あらゆる検査を問題なくパスしたうえで初めて製品化。
ポルシェのクラシックカーへの純正パーツは全世界で8万点以上が注文可能
現在、全世界においてクラシックポルシェに提供することが出来る純正パーツとアクセサリーは8万点を超えているそうです。
さらには在庫切れとなった部品についても、またそれを再度作り上げるということもされているそうで、2013年以来毎年約200のスペアパーツが新たに再度作られているとのこと。
パーツだけではなく1,000を超えるマニュアルやリペアガイド、「タイプ・寸法・重量 (TyMaTo)」のパンフレットなどの技術資料たちもポルシェクラシックから入手可能とのことです。
最近ではポルシェ・クラシックコミュニケーションマネジメント(PCCM)なども出されていますし、ポルシェがいかにクラシックポルシェたちに注力しているのかが見てとれますね。
参照記事:
◆ポルシェ・クラシックコミュニケーション・マネジメント・プラス(PCCMプラス)が997世代や初代カイエンにも対応に
◆ポルシェ・クラシック・コミュニケーション・マネジメントシステムが日本でも販売開始に
◆クラシック・ポルシェでアップルカープレイやスポティファイを楽しむ
これからもクラシックポルシェはきっと沢山走り続けるのだろうなと思うと、本当に凄いことだなと思うわけで、このクラシックカーたちを大切に、大切にポルシェのヘリテージとして「ポルシェとして走れる状態で」残していこうとされているポルシェがやっぱり素敵だなと思います^^