排気量の大きなエンジン&大きな触媒コンバータ
先日、ポルシェ911の開発において大きな責任を持つ現在のMr.911である、フランク・シュテフェン・ヴァリザー(Frank-Steffen Walliser)氏が、今後のポルシェ911のカレラモデルにはもうNAエンジンが搭載されることはないと断言されたことについて書きました。
そのことをフランクさんがメディアに対して話されたのは、新型ポルシェ911のタルガ4/4Sが発表になったタイミングだったわけですが、同じ時期にもう1つのことも、また違うメディアに向けて語られていました。
それが「これからのポルシェ911のエンジンは大きくなるだろう」ということ。
でも、彼はそう語りつつも彼自身が困惑しているようだったそうです。
つまりそれは、彼の意思で「エンジンを大きくしたい」のではなくて「そうするしかない」という想いであるから。
2026年からのユーロ7排ガス規制対応が大変
2026年から(と現時点では予定されている)次期の排ガス規制である「ユーロ7」が適用となる予定で、フランクさんいわく、このユーロ7は排ガス規制部分に関してはワールドワイドで見ても、最も厳しい規制になるだろうとのことなのです。
もちろん、そこには「ポルシェ911にガソリンエンジン車を残す」ということが大前提のこととしてあるので、対応するのが大変な規制であるわけですが。
そして、彼から続けて発言されたのは…
「(ポルシェ911には今後)さらに大きい排気量の、新しいエンジンを見ることになるでしょうから、まあかなりの大きな変化になるでしょうね」
と。
ん?どういうこと?
このインタビューを受けていた海外のメディアも、ここで「Wait, what? (え、何て?)」って言っています^^うーん、まあ、そうなりますよね。
だって、排ガス規制対応するのに、排気量の多い、大きなエンジンに変えるってどういうこと?今までターボでダウンサイジングしてきた意味は??
1リットルあたりのパワーリミットが設定される
…結局のところ、この次期規制であるユーロ7は、どうやら『1リットルあたりのパワーリミットを設けるものになるから』という理由からだそうなのです。
えーと、またしても私には難しいことはわからないので(ごめんなさいぃ~)、わかりやすく説明できず申し訳ない限りなのですが、つまりは、その次期ユーロ7規制がかかる時には、『1リットルあたりに課せられたリミットまで、最大限にパワーを出していけるエンジンを新たに開発する必要がある』ということのようです。
フランクさんいわく、このユーロ7に対応する為のエンジンは、現在のエンジンたちよりも平均して約20%くらい排気量が大きいものになるだろう、とのこと。
よってポルシェに限ったことではなく「多くの自動車メーカーが今後、4気筒から6気筒へ、そして6気筒から8気筒へ…と変えていくのではないか」とのことです。
さらにフランク氏は続けて「排気量を大きくすれば、CO2排出量も増えることになる」。
というわけで、このユーロ7規制の条件をクリアするということが、非常に難しいと懸念。
CO2排出量を抑える為に、触媒コンバーターも大きくする必要があり、ここで言う「大きくする」というのは「3~4倍くらい大きくなるという話をしてるよ」だそうです。
そんなにも大きく設計されたものたちをコントロールする為には、車の中に小さな化学工場を作らないとダメだね、なんていうフランク氏の発言も^^
触媒コンバータ― vs 馬力
ちなみに、触媒を大きくしないという選択をして規制対応をする場合、そうするには出力(馬力)を減らすことしか手立てはないようなので、ポルシェはそちらの道は選択しなかったようです。確かに、ポルシェが新モデルから馬力を減らしてくるとは思えません(まだわかりませんが…)。
最初にフランクさんが困惑して話されていたと書きましたが、そう、つまりそれは、2026年からのユーロ7規制にポルシェのスポーツカー、特に911向けのエンジンを対応させるということが、このような様々な問題により、非常に難しいという現実が見えているからなのです。
ポルシェ911向けに新しく6気筒エンジンを作る
でも「But we will never give up」、ポルシェは絶対にあきらめないと言ってくれています。何をあきらめないって、
「私たちは、必ずポルシェ911には6気筒エンジンを守り抜く」
ということ。
もちろん、それをするためには、相当な努力が必要になります。そう、もう1つ彼がこの大変なミッションをクリアする為に断言されたのが、
「(ポルシェ911の為に)また、新しいエンジンを作ります」
んーーーー、もうね、ここまで読んで、思わず鳥肌たっちゃいました(すみません、すぐ色々感動して鳥肌たつので^^)。
だって、めちゃめちゃ困難な未来が待ち受けているのに、「何があっても6気筒エンジンをポルシェ911に搭載し続ける為、何があってもポルシェはあきらめない。また、新しいエンジンを作るのだ」って、あああ、また鳥肌たっちゃう(すみません(笑))。
でも、なんだかこういうのって感動しませんか?ま、またしても私だけ?
ポルシェ911が大好きで、ずっとずっとポルシェが大好きで育ってきたフランクさんが、こんなに熱いことを語ってくれたら、私、もしこれを彼の目の前で聞いていたら、泣けていたと思います。もうハグしてた、絶対。「ありがとう、フランクさん!」って。(読み飛ばして下さい(笑))。
もちろん、前回にも書いた通り、GTモデル以外のポルシェ911カレラモデルには、NAエンジンの搭載は今後不可能であり、これからもずっとターボエンジンとなることは決定事項であり、これはもうどうにもなりません。
関連記事: ポルシェ911カレラはターボエンジンを継続、MT車も継続
ちなみに、もしフランクさんが自分の好きなようにポルシェ911を設計することが出来るとしたら、彼は「992よりも、もうちょっとスポーティにしたいな、出来るのであれば、もう少し(車サイズを)小さくしたい」とのことでした^^